ファインダー越しの彼女

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『おつかれ!今日はお客さん多くて疲れた!そっちは仕事終わった?』 『今度の休み、空いてるかな?』 『美味しそうなパンケーキを見つけたよ!良かったら休みの日にどうかな?』 『このあと電話しても大丈夫?』  連絡先を交換してから3日経つが、返信が来ない。これはもしかして、からかわれただけだろうか。優弥はめげそうになりながらも、こまめに茜にメールを送り続けた。  ようやく返信が来たのは、交換してから5日後の夕方だった。 『ごめんなさい。遅くなりました。訓練で時間が作れませんでした』  潔いほどの謝罪。他に情報はない。  仕事終わりに見たそのメールは、2時間前に来たものだった。優弥はすぐに返信する。 『おつかれ! 大変そうだね』  そこで手が止まった。このままではいつ会えるかもわからないし、電話で話すこともままならなさそうだ。  そうしたら、次のステップへ行けるかなんてわからない。  優弥は考えてた文面をやめ、他愛ないことから文を作り始めた。 『おつかれ! こっちは今仕事終わったところ。そういえば好きな食べ物って何?』  最近の小学生だってもう少し進んだやり取りをしそうなものだが、このくらいから始めても良いかもしれない。  だって、これは勝負なのだ。  いかに興味をもってもらえるか。  まずは相手をしっかり知ることからだ。優弥が送るとすぐにメールが返ってきた。  受信ボックスにあったのは茜からのメールだった。  はやる気持ちを落ち着かせながら、メールを開ける。 『パフェです。優弥さんは何が好きですか?』  さっきよりも素っ気なさがなくなった、女子らしいメールに見えた。  優弥はにやけそうになる口元を手で隠しながら、メールの返信をする。 『パスタです!趣味は何ですか?』  返信を送ると、すぐに返ってきた。 『筋トレです。女らしくなくて、ごめんなさい。優弥さんは何ですか?』  返ってきた文面を見て、優弥は思わず噴き出してしまった。  意外だった。  合コンではあんなにモデルの人みたいにキレイにしていのに、女らしさを気にしている。  もしかしたら、同僚の女性の中に女子力が高い人がいて、その人が作戦をたてたのかもしれない。そして、優弥はまんまとその作戦にはまってしまった。  茜は本当はファッションに興味がないかもしれない。そうだとしたら勿体ない。あれだけ整っているのだから、着飾れば誰もが振り返るはずだ。  そこまで考えたところで、優弥はそのことを知っているのは自分だけだと思うと、誰にも教えたくなくなった。 (そうか、これが独り占めにしたい気持ちか)  優弥は茜に何を訊こうか考えながら、返信文を作った。
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