53人が本棚に入れています
本棚に追加
『おつかれ!今日はお客さん多くて疲れた!そっちは仕事終わった?』
『今度の休み、空いてるかな?』
『美味しそうなパンケーキを見つけたよ!良かったら休みの日にどうかな?』
『このあと電話しても大丈夫?』
連絡先を交換してから3日経つが、返信が来ない。これはもしかして、からかわれただけだろうか。優弥はめげそうになりながらも、こまめに茜にメールを送り続けた。
ようやく返信が来たのは、交換してから5日後の夕方だった。
『ごめんなさい。遅くなりました。訓練で時間が作れませんでした』
潔いほどの謝罪。他に情報はない。
仕事終わりに見たそのメールは、2時間前に来たものだった。優弥はすぐに返信する。
『おつかれ! 大変そうだね』
そこで手が止まった。このままではいつ会えるかもわからないし、電話で話すこともままならなさそうだ。
そうしたら、次のステップへ行けるかなんてわからない。
優弥は考えてた文面をやめ、他愛ないことから文を作り始めた。
『おつかれ! こっちは今仕事終わったところ。そういえば好きな食べ物って何?』
最近の小学生だってもう少し進んだやり取りをしそうなものだが、このくらいから始めても良いかもしれない。
だって、これは勝負なのだ。
いかに興味をもってもらえるか。
まずは相手をしっかり知ることからだ。優弥が送るとすぐにメールが返ってきた。
受信ボックスにあったのは茜からのメールだった。
はやる気持ちを落ち着かせながら、メールを開ける。
『パフェです。優弥さんは何が好きですか?』
さっきよりも素っ気なさがなくなった、女子らしいメールに見えた。
優弥はにやけそうになる口元を手で隠しながら、メールの返信をする。
『パスタです!趣味は何ですか?』
返信を送ると、すぐに返ってきた。
『筋トレです。女らしくなくて、ごめんなさい。優弥さんは何ですか?』
返ってきた文面を見て、優弥は思わず噴き出してしまった。
意外だった。
合コンではあんなにモデルの人みたいにキレイにしていのに、女らしさを気にしている。
もしかしたら、同僚の女性の中に女子力が高い人がいて、その人が作戦をたてたのかもしれない。そして、優弥はまんまとその作戦にはまってしまった。
茜は本当はファッションに興味がないかもしれない。そうだとしたら勿体ない。あれだけ整っているのだから、着飾れば誰もが振り返るはずだ。
そこまで考えたところで、優弥はそのことを知っているのは自分だけだと思うと、誰にも教えたくなくなった。
(そうか、これが独り占めにしたい気持ちか)
優弥は茜に何を訊こうか考えながら、返信文を作った。
最初のコメントを投稿しよう!