ファインダー越しの彼女

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「なんで、ここに」  そう言葉をこぼさずにはいられなかった。  美容師の仕事にも慣れ、俺--柏木(かしわぎ)優弥(ゆうや)は、高校時代のクラスメイトに誘われて合コンに参加していた。  たまたま当日欠員が出て、たまたま仕事の早番シフトだったため、たまには良いかという軽い気持ちで参加するのを決めた。  明日の航空祭に行くために、早めに家に帰れれば良いなと思いながら、席に着くとそこには彼女--神宮寺(じんぐうじ)(あかね)がいた。  艶やかなショートカットの黒髪。やや鋭い目。きゅっと意思が強そうに結ばれた口元。服装はカットソーとスキニージーンズと簡単な装いだが、モデルのように見える。  なぜここにいるのか、その疑問が優弥の頭の中に駆け巡る。 「どこかでお会いになったことがありましたか?」 「あの、ブルーの、さんですよね」  茜は少し目を見開いた。まさか、航空自衛隊ファンと合コンの場で会うことになるとは想定してなかったらしい。もっとも、優弥も会えると思っていなかった。 「わたしたち高校の同級生で、茜は防衛大学校に行ったんだよね」  女性側の幹事である女性が茜の肩を持って言った。茜は困ったような顔をしながら、ドリンクメニューを見ている。 「たまたま夕方から空いたみたいだから、来てもらったんです。ね、茜」  幹事からの言葉に頷く茜。  優弥は茜から目を離せなくなった。  彼女との出会いは、2年前まで遡る。
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