八 休暇

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 山荘の南側に駐車場があり、そこから私道が幹線道路へ続いている。  吉永たちがBBQしている別棟は山荘の西側にあり、大きな東屋のような作りだ。窓があり、非常の際は寝泊まりできるように一通り設備が整っているが、吉永は使ったことがない。前田が注意をむけているのは、幹線道路へ出る私道の西橫の雑木林だ。  班員たちが腰の銃に手をかけた。  吉永は林を見た。サイボーグ化された左目は暗視モードに変化して林を拡大した。左の耳は人の可聴域を越えて、低周波から超音波までを聞きとりはじめた。  吉永は手話で、 「林の灌木の間に誰か居る。身を伏せて、こっちの動きを見ている。  皆はここに居ろ」  と指示し、東屋のトイレへ行くふりをして東屋の西へ出た。そこから跳躍して東屋の南の林にあるブナの大木の太い枝の上に立った。  誰かが潜んでいる灌木はこの大木の十メートルほど先だ。吉永はサイボーグ化された目と耳で数十メートル四方まで確認するが、他に誰か居る気配はない。  吉永はブナの大木の枝から、誰かが潜んでいる灌木の中に飛び降りた。吉永は足が地面に触れると同時に、灌木に潜んでいる者を一瞬に殴り倒し、首に左手の小指を触れて、麻酔薬を圧入した。  吉永が殴り倒したのは迷彩武装した女だった。女を肩に担ぐと、吉永は私道へ出て、東屋へ歩いた。
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