五 密輸ルート

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五 密輸ルート

 警察機構局特捜部の指揮官室で、特捜班班長・前田銀次捜査官が吉永に報告した。 「指揮官。松木の密輸組織は完全に壊滅しました」  松木は逮捕時、水死状態にあり、八丈青ヶ島にある警察機構局新横浜収監所で甦生処置を受けて、完全な意識回復まで数日かかった。その間に松木の意識記憶探査がなされ、松木の組織が何処にあり、どの程度の規模か判明した。  その結果、班長の前田銀次捜査官が率いる特捜班は、石垣島の地元貿易企業を騙る松木の組織を急襲して、これを殲滅している。 「ヘロインの密輸ルートは、昔ながらのゴールデントライアングルから、台湾、石垣、そして横浜だ。ダイヤも同じルートだ。  今回押収したダイヤも、前回我々が攻撃された際のダイヤも、分析結果から、原産地は東南アジアではない。ヘロインも原産地は東南アジアではない。完全な合成品だ」 「ダイヤもですか?」 「ダイヤも分析してるが、まだ合成か否か判断できないらしい」 「どういう事です?」 「ダイヤの合成は経費がかかる。合成した物を売買しても、利益があるか否かだ。密輸すれば、多少は利益があるかも知れないが・・・。  どっちも多額の経費と設備が必要な代物だよ。小さな組織では、ダイヤやヘロインの合成はできない。国家レベルの組織が必要だ・・・」 「では、ゴールデントライアングルは見せかけですか?」 「昔のように、反政府組織やゲリラの犯罪に見せかけているだけだ。  ルートは、石垣、台湾、シンセン、そこから先は不明だ・・・」
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