五 密輸ルート

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「共産国内を情報収集衛星で探査するのは?」 「これから試みるが、気づかれれば撃墜される・・・。ソファに座れ・・・」  吉永は窓を背にした執務机に座っている。その前に立っている前田班長(特捜部捜査官・警部)を、執務机とドアの間にあるソファーに座らせた。 「みっちゃん。情報収集衛星を使って、コンメイから南南西へ千二百キロメートル離れた地表施設のアップ映像を見せてくれ」  吉永は執務机のディスプレイに向ってそう指示した。  右手の壁が真ん中から左右にスライドしてディスプレイが現れた。  吉永は執務机から離れて、ソファーへ移った。 「映像が現れます・・・」  壁のディスプレイから三井情報官の声が聞えて、映像が現れたとたん、映像が消えた。 「どうした!映像が消えたぞ!」と吉永。 「攻撃されました!電磁パルスです!」  三井情報官は慌てている。 「サイバー攻撃ではないのか?」 「情報収集衛星のシステムがダウンしました。復旧に一時間はかかります。  攻撃はスパイ衛星からです。我々の情報収集衛星の百キロメートルほど上空から、スパイ衛星がステルス状態で、情報収集衛星を監視していましたが、みずからのパルス攻撃で、自分のステルス機能を失ったようです。  このスパイ衛星の国籍は不明です!」  壁のディスプレイに球体型のスパイ衛星が現れた。他の情報収集衛星からの画像だ。 「粒子ビームで破壊してくれ」 「了解しました」  三井情報官の言葉が終らぬうちに、スパイ衛星が破壊して壁のディスプレイから消えた。 「・・・」  前田班長が言葉を無くしている。 「心配するな!  他の情報収集衛星が対艦粒子ビームパルス砲でスパイ衛星を攻撃した。  攻撃せねば、我々の情報収集衛星が破壊される・・・。  情報収集衛星は国籍を公開するよう国際法で決められている。  建前として、今回のようなステルススパイ衛星は存在しない。  破壊しても、国際問題にはならない」  吉永の言葉に、前田班長がふうっと溜息をついた。
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