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「やはり、石垣、台湾、シンセンから先は意図的に不明にしてる。ヘロインとダイヤの合成は、北鮮の偽札造幣同様、中国の国家政策です。こうして衛星を攻撃した事で、国家政策だと暴露したようなものです。
松木を逮捕しても、代りが現れる。切りがない・・・」
前田班長は苛立ちを隠せない。
「中国の目的は何だと思う?」と吉永。
「単なる資金集めじゃないですね」と前田。
「ヘロインとダイヤの移動で何が変る?」
「移動経路に資金が集ることですか・・・」
「地域振興か・・・」
石垣、台湾、シンセン。ここまでのルートで密輸品を運搬したのは松木の密輸組織だ。地域の人間は密輸品の移動にいっさい関与していない。
シンセンからコンメイ近郊まで空路は使っていない。情報収集衛星からの高高度探査でそれは明らかだ。
密輸品を合成していると思われる施設がある地域の探査を、解像度を上げた探査に切り換えたとたん、ステルスのスパイ衛星から電磁パルス攻撃された。他にもステルスのスパイ衛星は存在しているはずだ。これでは密輸品の移動と施設を探査できない・・・。
「中国の国家政策なら、大っぴらに運送してるはずですよね。空路を使っていないなら、ごくふつうに中国の陸上物流を調べればいいわけで・・・」
「前田!その通りだ!コンメイ近郊からシンセンまでの物流変化を調べよう。
みっちゃん!松木が密輸をはじめた以前と以後の、シンセンとコンメイ近郊の、陸上物流変化を調べて図式化してくれ」
吉永は壁のディスプレイに向ってそう指示した。
「わかりました。コンメイから他のルートも調査します」
三井情報官が気を利かせて、他の陸上物流ルートも示唆した。
「そうだな。頼むよ」
陸上物流を調べる事に、なぜ気づかなかった・・・。密輸は単なる資金集めではないはずだ。中国は何をする気だろう?
吉永は中国のヘロインとダイヤの密輸、つまり国策としての輸出が気になった。
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