六 情勢変化

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 二〇三二年、十月四日、月曜。  環太平洋環インド洋連合国(Pacific Rim Indian Ocean Rim United Nations・PRIORUN)の十四艦隊が東シナ海と南シナ海に展開し、台湾東部の太平洋上尖閣諸島、奄美大島西方海域、竹島、東沙諸島、南沙諸島を実効支配した。  一艦隊を構成する戦艦は、おおよそ、原子力空母一隻、ミサイル巡洋艦四隻、ミサイル駆逐艦八隻、揚陸指揮艦一隻、輸送揚陸艦四隻、掃海艦四隻、潜水母艦二隻、原子力潜水艦三隻である。  中国は環太平洋環インド洋連合艦隊がこれほど迅速に諸地域と海域を実効支配するとは考えていなかった。 「吉永君。君に新しい任務だ。今後は出向先のCDB局長小関久夫君の指示に従って、特捜部をそのまま率いてくれ」  警察機構局特捜部指揮官室の壁のディスプレイから、本間宗太郎警察庁長官が小関久夫CDB局長を目配せした。 「さて吉永君。人選は君にまかせます。  海中、狭所、暗所、これらを苦にしない者が必要です」  小関久夫CDB局長は、サイボーグ化した吉永の顔を示している。 「俺のほかに、顔を機能交換した者がいるか?」 「昨年夏、松木の爆弾で負傷した者たちが機能交換してます」 「あいつらはあの時、ダイヤが皮膚に食い込んだだけじゃなかったのか?」 「顔の骨まで食い込んで骨格が保てなかったので、骨格を機能交換しました。そのついでに呼吸機能を君のようにした者がいます。目は交換していません」 「では、酸素ボンベなしに海中生息が可能だな。サイボーグ化したのは何名だ?」 「あなたと班長の前田捜査官も含めて四人です」 「前田はどうしてサイボーグ化した?」  吉永は班長の前田銀次捜査官の身に何があったか、まったく知らなかった。
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