0人が本棚に入れています
本棚に追加
すると、その時。
キキーーーーッ!
乗用車の急ブレーキ音が鳴り響き、我に返った私は、咄嗟に振り返る。
すぐそこまで迫る車に、思わず目をぎゅっと瞑った。
その瞬間。
「危ないっ!」
そう言って誰かに突き飛ばされた私は道路の端に叩きつけられた。
その直後、ドンっという追突音が聞こえた。
身体の痛みを堪えつつ、ゆっくりと顔を上げた。
すると、目に飛び込んできた光景に思わず目を疑った。
ボンネットから煙が出た乗用車と、その車に乗りハンドルを握ったまま目を見開き、震えている運転手。
そして…。
「岸田くん!?」
私は岸田くんに駆け寄り抱き寄せると、岸田くんは力なくこちらを見つめて笑った。
「大ヶ崎さん…、怪我は…?」
「私は大丈夫…。でも、岸田くんが…!」
「…よかった」
そう言って笑い、私の頬を撫でると、スッと力が抜けてぐったりした。
「…岸田くん?…岸田くんっ!」
その後、私が何度呼んでも彼は目を覚ますことはなかった。
救急搬送され、最善を尽くされたものの、岸田くんは命を引き取った。
最初のコメントを投稿しよう!