幸せのクローバー

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家に着いた彼女は、彼からもらった紙袋の中身を出した。 最期に彼は、何をくれたのか、確かめたかった。 彼女は、アクセサリーボックスと、封筒を取り出した。 そして、アクセサリーボックスを一旦置いて、封筒を開けた。 封筒には2枚、手紙が入っていた。 彼女は、手紙を読んだ。読みながら、静かに泣いた。 1枚目を読み終わり、2枚目を見る。 すると、そこに文字はなく、その代わりに四葉のクローバーがお洒落なマスキングテープで貼ってあった。 それを見て、彼女は左手の薬指から、10年前に彼に貰った指輪を外した。 そして、その内側を見る。 そこには、2人のイニシャルと四葉のクローバーが彫られている。 彼女は彼がプロポーズしてくれた時のことを思い出す。 『クローバーの花言葉を知ってる?幸福と、それから約束』 突然の言葉に驚いた彼女は、彼の顔を見た。 そして、真っ赤に染まった彼の顔を見て、何を言われるか悟った。 彼女の顔も、彼と同じ色に染まった。 『幸せにするって、絶対そうなるように努力するって、約束するからさ』 少し間を開けて、彼は言った。 『僕と、結婚してください』 結局、彼は約束を守ったあとに、破ってしまった。 破りたくて破ったわけじゃないと、わかっている。 どうしようもなかったことなんだ、と。 だから、と、彼女は思った。 私がその分の約束をしっかり果たそう、と。 彼女は彼と約束していたのだ。 何があっても、お互いを守り合うことを。 お互いに助け合うことを。 そして、後悔はさせないことを。 クローバーの花言葉は、「幸福」がよく知られている。 しかし、それだけではない。 クローバーの花言葉は、「幸福」「約束」そして、 「復讐」 彼女は、ふふっ、と笑って部屋を出たのだった。
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