幸せのクローバー

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あるところに、幸せな夫婦がいた。 その夫婦は、互いに互いを思い合い、助け合っていた。 夫はサラリーマン、妻は専業主婦。 決して贅沢な暮らしではなかったが、2人はそれで満足だった。 2人でご飯を食べ、他愛もない話をする。 休みの日には、家でのんびりしたり、近くに出かけたりした。 結婚してもうすぐ10年、時には、喧嘩をすることもあった。 しかし、どれだけ時間がかかっても、必ず仲直りした。 2人とも、両親は既に他界していたが、生前はその両親同士も仲が良かった。 まさに、理想の夫婦。 そんな2人は出会い方さえも、誰もが夢見るような運命的なものだった。 高校生の時、妻がよく通っていたカフェで夫がバイトしていた。 彼女が通い始めて、1ヶ月ほどすると、同い年ということもあって、2人はよく話すようになった。 しかし、高校卒業と同時に、彼女は大学進学のために東京へ出ることになる。 彼は、地元の大学に残った。 互いに、それまでの関係だと思っていたらしい。 連絡先も交換していなかった。 もう会うことはないだろう。 2人ともそう思っていた。 しかし、時が流れて5年後のこと。 彼女は大学院生、彼は中堅会社に就職していた時だった。 彼が、会社からの帰り道に寄ったカフェで、二人は再会した。 そのカフェは全国に支店があり、かつて2人が出会ったのもその店だった。 彼が、列に並んでいると、前の人の注文が聞こえてきた。 その頼み方に、彼は彼女のことを思い出した。 そっくりだったのだ。 彼女の頼み方は、かなり独特なものだった。 だから初めは、珍しい人だな、と思っただけだった。 だが、注文していた女性の横顔が見えたとき、彼は目を見開いた。 その女性は、彼女だったのだ。 彼は、彼女が覚えてるかどうかさえ気にせず、声をかけた。 すると、彼女の方も覚えていたらしく、また今度食事をすることになった。 それから、2年の交際期間を経て、2人は夫婦になったのだ。 2人の友人達は、この2人に羨望の眼差しを向けていた。 こんな物語のような話があるのか、と。 そして2人は、あと1週間で、結婚10年目を迎える。
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