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ぎこちない足取りで、私の家の前まで来ると、飛鳥は足を止めた。
「日和……」
ん? どうしたんだろう?
いつもとは違う空気を感じて、私は飛鳥の腕の中で飛鳥を見上げる。
「俺、日和が好きだ。ずっと好きだった。だから、日和は俺が絶対守るから」
えっ……
思ってもみないことを言われて、なんて返していいか分かんない。
「あの、飛鳥、私……」
私もずっと飛鳥を思ってた。
でも、「好き」っていうたった二文字が口から出てこない。
「いいんだ。日和がどう思ってても、俺は俺の気持ちを伝えたかっただけだから。ただ、覚えといて。日和を守るのは俺だって。日和に何かあったら、俺が必ず助けるって」
それだけ言うと、飛鳥は私の手に傘と荷物を押しつけて、雨の中へ飛び出していった。
私は、呆然と飛鳥が自分の家に飛び込んでいくのを見送る。
飛鳥……
私の胸の中は、もう飛鳥でいっぱいだ。
嬉しい気持ちと、切ない気持ちと、胸がキュンと締め付けられるような苦しさと、いろんな思いが交錯する。
とりあえず、家に入ろう。
それから、どうしよう。
飛鳥に電話する?
私の気持ち、言えるかな?
でも、ちゃんと自分の口で言ってくれた飛鳥。
私もちゃんと飛鳥に応えたい。
この雨、すぐ止むかな?
夕立なら、そんなに長くは降らないよね?
雨が止んだら、飛鳥の家に行こうかな。
私が言えなかった二文字をちゃんと伝えたい。
私は家に入り、着替えを済ませると、窓から空を眺めて雨が止むのを待った。
─── Fin. ───
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