163人が本棚に入れています
本棚に追加
#03.川上くんは罪な男です。
「そもそも、川上さんは……わたしのどこが、そんなに、好きなの」
秋めいた風を感じ、川上くんの手のぬくもりを感じながら、ふと、そんなことを聞いてみる。……周りの目が気にならないといえば嘘になるが。SL広場。サラリーマンの街頭インタビューでよく出てくる場所だ。小さい頃テレビで見て、憧れていた世界。へーえおじさんたちのパラダイスだぁー、なんて思って、羨ましがってた。
川上くんは、立ち止まる。「……どうして」
「……うん?」声が小さくてよく聞き取れなかった。いつもはきはきと喋る川上くんにしては。
すると、川上くんは、
「なんで……おれのこと、さん付けすんの。……おれ、ちゃんときみの、……彼氏なんだけど……」
拗ねたように言う川上くんが可笑しくて、ふぅっ、と、わたしは、吹きだしてしまった。おいおいなんで笑うんだよ、と言われても、簡単には、止まれない。すると、――
「……っ」
「ほら。止まった」
「だっからも……っ」わたしは慌てて彼の手を掴み、改札口へと急ぎ、「ところかまわずキスするのやめてよ……っ!! 誰かに見られでもしたら――あ――」
最初のコメントを投稿しよう!