川上くんは、わたしの虜。【完結】

#03.川上くんは罪な男です。

　ばいばーい、と、改札内でわたしたちに手を振る寺垣さんの姿を見かけた。ちーん。アイハーフトーゥ、フォール。トゥルーズィーットール!!　byリンキンパーク。

　……寺垣さんは、悪い人ではないのだが、割と、……あのかたは、情報通なところがあるからなぁ……朝の、蒔田さん、柏谷さんを巻き込んだ騒ぎがなくたって、現時点で寺垣さんに知らされた時点でもう、……決定的だ。

　あーあ。社内恋愛なんて二度とごめんだと思っていたのに。

「桃花はおれのものだから」

「ちょ……っ」さりげなく隅に押しやって。壁ドンして。顎クイとかこのひとどれだけ攻めてくるつもりなのよもう……仕事一緒してるからある程度知ってはいたけど。このひと、相当のドS……ッ……!!

「や、……あの……川上、く、……ん……」

「――キスされるの期待してた？」

　反射的に目をつぶっていたわたしに、川上くんは、くつくつと心底可笑しそうに笑う。

「んもっ……っ」ぽかぽかと手加減して胸のあたりを叩いてみても動じず。川上くんは……なんだかわたしといると、嬉しそうだ。会社だとビシバシ系。クールなサラリーマン演じているくせに。――まあね。