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あれが演技だってことはわたしの目にはまるっとお見通しでしたけどね。
「桃花ってからかうと面白えのな……本当……」くっくと川上くんは喉を鳴らす。「あーたまんない。桃花の困った顔や怒った顔とかもっと……色々、見てみたい」
ふん、とわたしは鼻を鳴らした。「……わたしの怒った顔なんて毎日見てるじゃんよ。……川上くんは」
すると、くしゃり、と、高いところから川上くんは、わたしの頭を撫でた。
目が合った。すると、彼は、愛おしそうに、微笑み、
「――そういう、得意げな顔も……たまんない」
えーっとこのひと。どうしたんですか。
ハーフリムの銀縁眼鏡で。黒髪で。前髪が眼鏡にかかるかかからないかじれじれするくらいには長く、サイドがシュッと、シャープに切りそろえられていて。……あああ。このひと、眼鏡外したら可愛いのかなぁ……なんて、妄想したことのある自分を、誰か、褒めてください。
あろうことか。川上くんは、わたしの両の耳をふさぐと、わたしを、壁にますます押し付けて、
「……川上『くん』呼びが定着して……よかったね」
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