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#04.川上くんは裏で頑張る男です。
「――はい。どうぞ……」
目の前にことりとカップが置かれる。センスのいい、碧を思わせる水色のカップに入ったコーヒーに湯気が立つ。……いい、香り……。
川上くんが正面に座るのを見届け、わたしは、カップを持ち上げ、口をつけた。「……美味、しい……」
口の中で広がる芳醇な香り。惹きたての豆が香りたち、こちらの情動を、刺激してくれる。……あああ、いい……。ほっこりする……。
「癒されるぅ……」知らず、笑みがこぼれる。「ありがとう……。本当美味しい……。隆宗……」
ちょっと目を見開いた川上くんが、ふぃっ、と顔を背け、手で目元を覆った。「ああ……どうしよう……」
「どうしたの?」ちょっと疑問に思ってわたしが聞けば、「せっかく……切り替えたつもりなのに」
ずい、とこちらに顔を寄せた川上くんが、……しかし、困ったように顔を背け、
「……好きがあふれて、困っちゃうじゃんよ……可愛いこというなや」
ぽん、と頭を撫でられたものだから、本気で脳みそがシェイクしたかと思った。……はああ。心臓に悪い……。
「コーヒー。好きなの? 隆宗……」
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