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にぃ、と口の端をあげた川上くんは、「……いま、えっちな想像したでしょう? 桃花」
「しーてーまーせーんッ」
コーヒーに口をつけた川上くんが、「慌てて否定する辺りがなんか……怪しい」
ぐぅの音も出ない。……あぁーあ。職場恋愛なんてこりごりだと思っていたのに。最初のキスと、さっきのキスで、すっかり、骨抜きにされた自分がいる。……あの続きを、して欲しいな、なんて……。
「ところでお腹空いてるよね」と、エプロン姿の川上くんが立ち上がり、「パンケーキ的なものでよければ、パパッと作ってくるよ」
――え。「なんで。いいの? ……てか、パンケーキなんてパパッと作れるもんじゃ……」
「や。ホットケーキミックスで簡単に作れるんだよ。……座ってゆっくりコーヒー飲んでな?」
そうしてまた、教師みたく、頭をぽんぽんしてくるものだから、「……子ども扱いして……」
くしゃっ、と川上くんは笑う。「きみが子どもではないのはおれが一番よく分かっているよ」
そうして、キッチンに向かう川上くんの背を見送り、思う。……子ども扱いされるの。……
「嫌いじゃない」
* * *
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