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「言っておくが、おれも、腹筋、ばっきばきだぞ」となんと、川上さんは、ワッフル素材のTシャツの裾に手をかける。なにかをたくらんだ少年のように、いたずらに笑い、「……見るか?」
「見ま、せん……っ!!」
「顔が真っ赤だぞ。桃花」
「だから。名前で呼ばないでください。……川上さん……っ!!」
「おまえって本当、からかうと面白えのな。桃花。……ますます惚れた」
「わ、……わたしは、全然川上さんのことなんか……」わたしはぶんぶん顔を振り、「第一わたし。ちゃーんと、相手のことを、すっごく好きになってから、付き合う主義なんです……っ。相手が百パーセントわたしのことを好きなのに、自分の気持ちが百パーセントじゃないと、付き合うのって、相手に、し、失礼じゃないですか……っ」
「なにそれ」と川上さん。「……え。別に、おれ、桃花が百パーおれのことを好きじゃなくても。全然、構わないけど?」
――い。「そうなんですか」とわたしが尋ねると、「そうなんです」と川上さんが頷く。
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