#01.川上くんは情熱的な告白をします。

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「そんながっちがちに最初から決めなくてもさぁ。付き合っていくうちに、こころの交流を深めてさぁ。互いのことを知っていくうちに、いつの間にか互いを好きになっていく……そんな感覚でいいんじゃないかなぁ? ……ま、おれは、二百パー桃花のことが好きだけど。別に、桃花が百パーじゃなくても、おれは、全然構わないよ」  わたしは首を傾げた。「……川上さんって、いつも、女性にはそんな告白するんですか」 「しない」きっぱりと川上さんは言い切る。「こんなに好きになったのは桃花。きみが……初めてだ」  どうしよう。ぐわんぐわんする。わたしのなかで、恋愛の天秤が揺れている。  職場恋愛のリスクと。目の前の、……水も滴るようないい男と恋愛する権利。……どちらを取るべきか。  決まっている。 「わ、……わたしのこころは決まっています。だから、川上さんと、付き合うことは、な……」  がたん、と椅子が揺れた。後ろに倒れていたのだ、と、分かったときには既に、わたしは、席を立った川上さんに。背を屈め、わたしの高さに合わせてくれた川上さんに――唇を、ふさがれていた。
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