グレーなふたり

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「やっと終わったー……」  私はようやく日直の日誌を書き終えると、教室を出ようと席を立った。しかし、ふと提出箱に積み上がった数学のノートがそのままになっていることに気づいて足を止める。提出日は今日だから、数学係が出し忘れたに違いない。 (どうせ日誌を出しに職員室入るし、ついでだから持っていくか……)  私は数学のノートの山を抱えると、ドアに向かって歩きだした。すると 「何してるんですか」  ガラリとドアが開いて、ドアの向こうに黒瀬くんが立っていた。 「数学のノート、係の人が提出するの忘れてるみたいだから、出しに行こうかなぁと」  私が笑うと、黒瀬くんは怪訝そうに言う。 「白井さんって数学係じゃないですよね」 「う、うん。でもほら、日誌出さなきゃだし、ついでだから……。黒瀬くんはどうしたの? 忘れもの?」 「いえ、違います」  それ以上話すつもりがないのか、妙な静寂が流れる。 「じゃ、じゃあ……またね」 「はい。また明日」  私は教室を出ると、黒瀬くんの言葉を思い返した。 『白井さんって数学係じゃないですよね』 (いい子ぶってるとか思われたかなぁ……)  ため息をついて視線を落とすと、一番上のノートに『名簿28番』と書いてあるのが目に入った。提出物は一番上が名簿1番になるように並べて出すのがルールだ。 (数学の安達先生、こういうとこ厳しいし……)  私は床に提出箱を下ろすと、並び替えるべくノートを手に取った。
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