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飛行機の中であんなに寝たのに、友さんの傍は安住の地だったのか、泥のように眠った俺はカーテンの隙間から差し込む光で目が覚めた。
ぼんやりとしながら隣にあるはずの温もりを求めて手を伸ばした。
でもいつもならそこにある温もりはなかった。
身体を起こし部屋を見渡す。八畳程の寝室には家具はなくキングサイズのベッドが大半のスペースを占めている。
起きない頭でもふと違和感を感じた。
床に足を下ろし大きく伸びをしてドアを開け廊下に出た。途端甘い匂いが鼻をくすぐる。
誘われるようにキッチンへ向かうと着替えを済ませた友さんが振り返った。
「おはよう」
ぱぁっと花が開いたような可愛い笑みを浮かべ近寄ってくる。そしてすっぽりと俺の胸に収まった。
「おはよう。もう起きてたんだ」
胸元でうんうんと頷きクスクスと笑う。
「もう十一時だよ?」
そう言われ慌てて壁に掛けてある時計を見て愕然とする。
爆睡していた時間は甘い情事の後、八時間も経っていた。
「寝すぎだよね」
そう呟けばまたクスクスと笑った。胸元から顔を起こし頬に手を添え触れるだけのキスをくれる。
最近、鎧を着ていない友さんはふんわりや柔らかい雰囲気を醸し出している。
何も着けてはいない素のままの友さん。誰にも見せない俺だけの友さんなんだ。そう思えば腹の底からむくむくと独占欲が湧く。
「さっき気なったんだけど……可愛い子達はどこ行ったの?」
枕元にズラリと並べてあるファンシーなぬいぐるみ達がなくなっていた。
クスクスと笑いながらベランダに向けて指をさした。
背中を向けていたベランダを振り返ると仕舞ってあった物干し竿に綺麗に並んだ可愛い子達がぷかぷかと浮いている。
「ちょっと気になったから洗ったんだ」
風に揺らされふぁふぁと動き、時には隣の子と話してるように左右を向く。
それを愛おしそうに友さんは眺めている。
……気になるってことは……汚れが気になるということ。俺がいない間、この子達を抱きしめて眠る友さんが想像する。
俺の代わりにはならないが、友さんを癒して寂しさを埋めてくれていた揺れる子達を眺めながら友さんの腰を引き寄せ、間近にある髪にキスを落とした。
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