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そうだった……この人は迅速に合理的に行動することをすっかり忘れていた。
頭の回転が早くそれに行動力が伴う。職場にいる友さんを思い浮かべ大きな溜息を吐いた。
ベランダから返ってきた友さんはソファに腰を下ろし、スマホを片手に真剣な顔をして指を動かしている。
俺はとりあえず顔を洗いに洗面所に向かい、両親にどう説明したらいいものかと思案していた。
いきなりカミングアウトするのも勇気がいる。
そう言えば引越ししたことでさえ伝えていなかったことを思い出した。
何から話せばいいのか……若干パニックになりながらも、友さんと初めての遠出に気持ちはワクワクし始めていた。
……まあ、そのまま伝えればいいか……
ただ付き合っていると口にするのはハードルが高すぎる。
俺の実家は父親が婿養子で、母親の実家になる。
祖母は母の実母。爺さんは俺が就職した年に亡くなって、 俺には年子の妹が一人いる。
跡継ぎだとか、一人息子だとか、田舎ならではの小煩い親戚もいるが、両親は自分の人生だから楽しめと早く自立するようにと育てられた。
そのためか、俺は実家に執着がなく大学から一人暮らしを始め、帰る気持ちはない。
それを咎めるようなことも言われないし、祖母と父親の確執に苦労した母親は結婚に縛られなくてもいいとさえいう。
だけど……男と付き合ってるから結婚はしない……なんて受け入れてもらえるものだとは思っていない。
今から実家に車移動するとなれば、着くのは夜になる。
どこかで泊まったほうがいいのかもしれないと思考をあらゆる想定に飛び交わせていた。
さほど濃いくもない髭を剃り、身支度を整えた頃、友さんが俺の背中に纏わりついてきた。
「ホテル予約したから。チェックインも遅めにしてるからのんびり行こ?」
後ろから抱きつく友さんは瞳を鏡に移しにっこりと微笑んでいた。
綺麗に微笑む表情に見蕩れた俺は、その行動力の速さに感服していた。
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