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浴室のスイッチを切って、月明かりを頼りに廊下を歩いてくる友さんは細い腰にタオルを巻き、髪を拭きながらこっちに向かってきた。 まだ俺には気づいていない。 まさか俺が帰ってきてるなんて思ってもみないはずだから。 ソファから微動だにせずその姿をじっと見つめる。 独りここで過ごす時はいつもこんな感じなんだろうか。 いつもなら二人で風呂に入り、タオル一枚でウロウロすることなんてなかった。 それでも独りで暮らす友さんの日常を垣間見たようでなんとも言えない気持ちになる。 照明も付けずひっそりとした家の中をこうやって生活している友さんは普段俺に見せる姿とは違っていた。 「……誰?」 気配を感じたのかリビングの手前で立ち止まった友さんは目を凝らしこちらを伺っている。 ゆっくり立ち上がった俺は見えないだろう満面の笑顔を見せ手を大きく広げた。 「ただいま」 髪を拭いていたタオルがパサリと床に落ちた。 呆然と立ち尽くすその姿に身体中の細胞がワサワサと蠢き俺の体温を上げていく。 「友さん」 スローモーションのように動き始めるその姿に俺の熱を上げた身体は無意識に歩き出していた。 腕を伸ばしたった数メートルの距離を我を忘れ走り出す愛おしい人の体温を感じたくて徐々に距離を縮める。 広げた腕の中にすっぽり収まった細い身体を力強く閉じ込めるように抱きしめた。 足元には腰に巻いていたタオル音を立てず滑り落ちる。 そんなことはどうでもいいのか友さんの腕は俺の首元に絡みつき、何度も俺の名前を呼んでいた。 風呂上がりの滑らかな肌に手を這わし、その感触を味わう。 目の前にあるしなやかな肩に唇を寄せた。 「なんで……」 まだ信じられないのかどうしてここにいるのかと戸惑う声に強く抱き締めたまま呟いた。 「驚かそうと思って」 腕の中でモゾモゾと動き、回した腕を解いた指先が頬に触れる。 瞳を合わせ確かめるように唇を合わす姿がまた愛おしく湧き上がり篭った熱は吐き出そうと動き俺を掻き立てた。
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