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飲みすぎたら顔が浮腫むからと、ほんのり頬を染めたところで友さんは酒を飲むのを止めた。 友さんはそれほど酒は強くない。飲めばすぐ顔に出るし瞳は潤んで妙な色香を放つ。 その度に俺はソワソワしてしまうんだけど。 家で飲むのはいい。だが外で飲むのはいささか不安を煽る。 男が酔っ払ったからと言って、誰かに襲われることはそうそうない。 だからといって仮にも恋人同士の俺にその姿は危うく不安を煽る。 「じゃ、俺もこれで終わりにしよ」 俺は店員を呼び烏龍茶を頼む。 その様子を友さんは頬を染め笑みを浮かべながらみていた。 「どうしたの?」 なんとなく尋ねると左右に首をふりなんでもないという。 「気になるから……ちゃんと言って?」 「別になんてことないんだ。ただ、元希の顔付きが変わったなぁと思って」 「顔つき?」 「ん。責任者になって忙しくなっただろ?自分が動かなくちゃならないことも当然のように増えて。凛々しくなったなと思ってさ」 確かに慣れない海外での仕事は神経を使う。だけど頼もしい社員がいる。仕事は確かに増えたけど…… 俺の心配は他所に俺の顔つきについて語るけど、友さんの酔った表情だって付き合い始めた頃からだと随分と柔らかくなった。 「さっき友達の前でも会社仕様の顔つきでさ、俺のまえでだけ素の元希を見せてくれるから嬉しくて」 頬を染めているのは酒のせいだとわかってはいても、蕩けるような甘い表情を見せる友さんこそ、ありのままを見せてくれている。 俺の前だからこそ素のままを見せてくれている。だから俺も友さんの前では俺もありのままの自分でいられるんだ。 案ずるより産むが易し……かな。 友さんは心配しなくてもちゃんと使い分けれる人だ。 俺達はちゃんと信頼しあえてる。 「友さんの前で会社仕様なんてやだよ。それは職場だけでいい」 上司で部下で。憧れていた人は俺の恋人。肩書きは関係なく俺は清藤 友海という人に惚れたんだ。 くすくすと笑った友さんは、 「職場を一歩でたら、俺は元希の恋人だから」 そう囁いた。
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