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 エレベーターに乗り込んで二人だけの空間に、なんだか久しぶりな気がしてしまうのは何故だろう。 久しぶりの逆ナンに緊張してしまったのか、友さんと二人でナンパされたことが原因なのか。 男二人だとカップルだとは誰も思わない。友達のような距離感を保ちながら暮らしている俺達はこれから先も恋人同士だとは思われることはない。   こうやってナンパされることも新しい出逢いも俺達の関係は誰も知ることはないのだから必然的に訪れることがある。 大声で友さんは俺のもんだって叫びたい。  そんな羞恥を晒すことはできないもどかしさ。  こんな風に二人っきりにならなければ恋人としての時間は作れない。  その不甲斐なさにもがき、お互いに気疲れしてしまわないか不安で仕方がない。迫り上がってくる不安に絡みつき垂れた指先をそっと握りしめた。  頬を染めて見上げる潤んだ瞳。ゆらゆらと揺れているのは酒のせいだけではない気がした。 「……友さん、愛してるよ」  迫り上がった感情は声にすると微かに震え掠れたダサい声になった。 「ん。俺も……元希……」  しがみ付くようなその手を握りしめ扉が開くと離れないように絡ませて、部屋へと歩き始めた。  カチャリと扉が閉まり、ポーンっと二人だけの世界に放り出されたような感覚に、離さないように閉じ込めるように身体を強く抱きしめて唇を奪う。ドアに友さんを押しつけ貪るように舌を絡めた。 「…ふぅん、んんっ…」 甘い吐息に身体中の血液が温度を上げた気がした。燃えるように熱くマグマのように咽せ上がる感情に理性は闘っている。 唇をゆっくりと離せば、唇の隙間から赤い舌が覗き銀糸の糸が俺達を繋げた。 「友さん……なんでナンパにのったの?」  上がる息を整え、素直な疑問をぶつけた。結果として高校時代の後輩だったことはわかったのだが、どうしても真意が聞きたかった。 深呼吸を繰り返し、息を整えた友さんは視線を外さず真っ直ぐに俺を見つめる。 「彼女……かおりさんの視線……元希に何かを訴えたいような目で見てたから……なんだろうって突き詰めたくなっただけ……」 「本当に?」 「本当、それだけだよ?」 「……そう」 「……もしかして俺、疑われてるのか?」 俺の両腕を握りしめた友さんの瞳は俺の気持ちを読み取ろうとしているのか、探るようにぶつけてくる。 「疑ったりしてない。ただ、なんで?って思っただけだから」 「彼女……お前に好意持ってただろ?元希に気のあるやつと同じ目をしてたんだ。ただのナンパならあんな目で見ないから」 「俺に気のあるやつって?」 「会社でも……お前の好きなカフェでも……元希に好意を向ける人の目……彼女も同じ目をしてた。普段なら俺が睨み利かしてるから誰も寄ってきたりしないだろ?でも……ここはお前の地元だし……」  地元でナンパされたから彼女のことが気になったのか? そんなことより睨みを利かすって…… 「元希は自覚が薄い。お前は自分で思ってるよりモテるんだよ」 「そんなことないし!」 「それは……お前が俺に夢中になってくれてるから気づいてないだけだろ?その魔法……いつ溶けるのか不安だよ、俺は」
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