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「魔法って何?俺は何にも囚われてないし魔法にもかかってないよ?」 ふっっと溜息を吐いた友さんは俺の手を取り手前のベッドに座った。俺は膝を突き合わせる距離で友さんのそばに座った。 「あの二人……可愛いかったよなぁ」 目の前の壁をぼんやりと見つめ呟いた。さっきまでの熱は一気に下がり思わず友さんの手を握りしめた。 「元希とかおりさん、二人でいる所をみたら……俺はなんにもしてやれないんだって思ったんだ」 片方の手を友さんの腰に回す。なんだかその先の言葉が怖くてしがみつくように。 「元希……お前、俺といて……幸せか?」 「幸せだよ?友さんは幸せじゃない?」 「もちろん、幸せだよ。この幸せがずっと続いたらいいのにって……思ってる」 俺達の未来か……ずっとその先の未来を不安がるのはわかる。 俺達は上司と部下であって、それ以前に男同士で愛し合っている。 誰にも言えない関係で、結婚さえ出来ない状況は不安に思うのは当然のこと。 だけど俺の考えは違う。タイでの事故で俺の考え方はガラリと変わったんだ。その事を口に出したことはなかった。 「友さん。俺ね、毎日毎日本当に幸せなんだよ。今日幸せで、明日も幸せでありたいと思ってる。その為に毎日一生懸命俺なりに生きてる。 それが積み重なって未来の俺達に繋がってると思ってるんだ。友さんがいて俺がいて。お互い毎日愛し合っていればどんな形であろうが気にしちゃいない。誰になんて言われようと俺の人生は俺が決める。俺はこの先もずっと友さんと一緒にいたい。じいさんになっても、ずっと」 「元希……」 「いんじゃないかなぁ。今未来のことを決めなくても。あの家で二人で暮らして、俺は毎日友さんを愛していく。友さんは?俺を愛してくれない?」 「毎日……目が覚めてお前がいてくれるだけで俺は幸せで……これからもずっと……愛していたい」 「だったら俺を信じて?俺も友さんを信じてるから」 「俺……欲しがってばかりで何もしてやれない……結婚も子供も元希に与えてやれない……それでもずっと一緒にいたいんだ」 形なんてどうだっていい。お互いに信じ合っていれば。限りある人生を二人で謳歌したい。 「俺ね、友さんとは絆っていうのかなぁ凄く強いものを感じてるんだ」 「……絆?」 「そう、絆。 形や物で縛られるより、心が繋がって……強い絆で繋がっていたい。だから何かをしてほしいとか思ってないよ。友さんが隣にいてくれるだけで俺は幸せなんだよ」
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