(6)

14/31

265人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
「誰からも……祝福されなくても?」 「祝ってもらわなくても。俺は友さんとずっと一緒にいれたらいい」 「家族と……その、疎遠になっても?」 「家族だって一人の人間だから。気の合わない家族だっている。それは仕方がないことじゃない?女と結婚したって有り得ることでしょ。俺は何があったって友さんを選ぶ」 何かを考えるように視線を漂わさせた友さんは握り締めていた俺の手の上に重ねるように掌を乗せた。 「ごめん、ありがとう」 「なんで謝るの?最初に好きになったのは俺なんだから。友さんには感謝してるんだ。男の俺を選んでくれて」 「俺も、俺こそ……選んでくれていっぱい幸せにしてくれてありがとう」 俺は毎日楽しく友さんと一緒にいることが幸せでこんな風に不安に思う気持ちに寄り添ってこなかったことを後悔した。 いつか別れる日が来ても幸せだったと思いたい。 タイでの事故後、俺はそう思うようになった。そして、何があっても友さんを離さない大切にしなければと思うようになった。 それはこれからの俺達の約束と同じで毎日幸せでいることが未来への幸せに繋がっていると思っている。 「でも、俺といて息苦しくなった時は絶対に言ってほしい。無理はしない。約束して?」 「わかった。友さんもね」 これからの約束。未来の俺達へのルール。 こんなふうに 色んなことを決めていけたらいいな。 重ねられた手が俺の頬に触れ、友さんの熱が染み込んでくる。身を委ねたくなるような心地いい掌に目を閉じた。 包み込むように合わさる唇。啄むように触れ、しっかりと合わさる。 隙間を作れば湿った熱が忍び込み優しく絡めとれば友さんの身体からすっと力が抜けていくのを感じた。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

265人が本棚に入れています
本棚に追加