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「今日は最後までしないよっ」 「ん?なんで?」 「重い腰引き摺って元希の実家に行きたくない」 「……う、ん、まあ、そうだね」 「納得できないって感じだな」 「ん……まあ、いい雰囲気だったし?」 くすくすと微笑みながら友さんの腕が首元に絡みついた。 「帰ったらいっぱいしよ?今日は我慢」 「……わかった」 「可愛いなぁ」 可愛のはどっちたよ!と苦笑しながら鼻先にキスを落とし隙間なく合わさる唇に明日も明後日もこの先ずっと何度でも愛し合える。 わかってはいるけど気持ちはその度に抑えが効かず悶える思いは続くんだろうと内心溜息を吐いた。 それが何度も友さんを求め愛し合うことなんだろう。この気持ちはきっと続くんだろうな。それもまた幸せなことだ。 少し乱暴にベッドに押し倒し覆いかぶさり友さんのベルトに手をかけた。 互いの下着をずらし、天を仰ぐお互いの分身を一つに纏め、ゆっくりとスライドさせる。 昂る分身からは愛おしい蜜が溢れお互いの芯に塗り込むように絡めた。 息が上がり甘い吐息を漏らす愛おしい人は、全てを俺に捧げてくれている。 そんな人を大切にしないなんてあり得ない。心がお互いを求めている間は俺はこの人を大切にしたい。 それは誰だって人を愛したら思うことなんじゃないだろうか。 俺が付き合った数々の女達にこんな風に思ったことは正直なかった。幼い恋愛は俺の心を動かしてくれるものではなかったってことだ。 友さんで良かった。こんなにも人を愛することの意味を教えてくれた。 「何考えてる?」  何もかもお見通しの友さんには嘘は通じない。 「こんなに人を好きになって大切にしたいって思ったこと、なかったなって。友さんを好きになって友さんが好きになってくれて俺は幸せだなって実感してたの」  ゆっくりとスライドをさせ頂点を目掛けて駆け上がるほどの快感がないが、心が昂まりを煽っていく。  見つめていた瞳は徐々に色香を含み香りさえ放つような甘い笑みを浮かべ巻きつけた腕に力を込めゆっくりと体を起こした。  至近距離で見つめ合い俺の口元に視線を落としてしっとりと唇を合わせた。 伝わってくる友さんの体温。握りしめた互いの芯とは違う熱に頭の中が蕩けそうになる。  「ほんの些細なことでも幸せって実感できるものなんだって元希と付き合って初めて知った。過去を振り返ればあれは幸せだったんだと思うことはあっても今感じるほうが何十倍も実感できる。それは元希じゃないとダメなんだって思ってる」
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