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髪を乾かし終えるとソファに座った俺の隣に座り肩先に頭を乗せた。 肩を抱きしめてやると友さんの腕は俺の腰に回る。 「今日、帰ってこないと思ってたから……夢見てんのかって思った……」 「うん」 「後一日って、今日を乗り切ったんだ……」 「……うん」 「でも……帰ってきたら何もする気にならなくてぼーっとしてて、そしたら元希から電話がかかってきて、明日の準備しないとって買い出しに行って……溜まってた洗濯物を洗濯機に放り込んで……そしたら、ああ明日元希が帰ってくるんだって実感が湧いてきて……」 「……そう」 「風呂を済ませて眠ったら明日が来て会えるんだって思ってたのに……ここに元希がいた……」 「びっくりさせちゃったね」 「風呂でうとうとしたから夢かと思った……」 ……だからこんな時間に風呂から出てきたのか…… 「風呂で寝たら危ないから……あ、でも、そっか、寝て起きたら俺がいたのか……」 「うん。だから夢かと思ったんだ……」 あと何日と指折り数えて俺の帰りを待ちわびて、それでも寂しいとは口にしない俺の恋人は寂しがり屋で甘えん坊だ。一緒に住み始めてわかったことがいくつかあるけど、この人が沢山の可愛いぬいぐるみを愛してやまないのはそういうことだと知ったんだ。 「今回の出張は長かったから……」 「そうだね」 だから俺からは寂しかった?なんてことは聞かない。彼が必死で堪えているものに触れることはしない。 「一段落したから当分は一緒にいられる……」 業務内容を把握する上司で可愛い恋人は、寂しいという感情を抑え、この日を今か今かと待ちわびていた事が絡みついた腕の強さで痛いくらいにわかる。 俺だってそうだ。主任になればこうなることをわかっていながら、友さんの近くに行きたくて選んだ道なんだ。 だから泣き言は言えない。 「あとは常盤さんにタイを任せて、俺はこっちの仕事もしなきゃね……」 本社に転属になった今も常磐はタイにいる。本社とのパイプ役として頑張ってくれている。 溝下の下で働くという形より、二宮の下で働くという形式が彼の心境の変化と仕事に対する意気込みを目まぐるしいほどに変えていた。 「……もう少し……こうしててもいい?」 「いいよ」 月明かりがうっすらと友さんの横顔を映し、静まり返った部屋に二人でソファに座っている。ただ静かに抱きしめてお互いの体温を感じていたいと思っているのは俺だけじゃないはず。 胸元に擦り寄った愛おしい人の声が震えていたことは気付かったことにしておこう。
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