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ゆらゆらと風をまとっているカーテンを少し開け、外の景色に目をやる友さんの後ろに立ちそっと腰に腕を回した。
「俺だって、俺の部屋に友さんがいてこうやって見慣れた景色を一緒に見てるなんて不思議な感覚だし、同じ景色を見れるなんて嬉しいよ。どこにいたってどんな時だって友さんがいてくれることが嬉しい」
友さんといれるならどこだっていい。
「幸せって美味しいもの食べたり、仕事での達成感だったりもあるけど、本当の幸せって大好きな人と作っていくものだって友さんと出会って知ったんだ」
一緒に見るもの感じるもの。それは捉え方は違っていたとしても同じ気持ちなら幸せを生んでいく。
この部屋で感じているものはきっと、俺が友さんの過去に触れた時の感覚と一緒なんだと思うと胸がじんわり温かくなる。
抱きしめた身体から感じる体温さえ愛おしくてそっと首筋に唇を添わせた。
「も、元希! さ、散策に行こう!日が暮れる前にっ!なっ!」
焦ったような声色で腕の中で暴れ出す友さんが可愛くて回した腕に力を込めた。
「誰もここには入ってきませんよ。もう少しだけ、ね?」
ぐりぐりと腕の中で身体を反転させ、じとーっと俺の目を見つめて友さんの頬が膨らみ低い声が響いた。
「真田、俺で遊んでるだろ」
上司の顔を見せているんだろうが頬が赤らんでアンバランスな表情にぷっと吹き出した。
「清藤さんが可愛くて食べちゃいたいなぁって」
ますます紅くなる顔ににやけてしまう。
「嫌われちゃいやなんで清藤課長と散歩にでかけましょうか」
名残惜しく身体を離すと追ってくるように腕が腰に回ってくる。
「耐性がないな。夜まで待てないのか」
甘く見つめ合う……というよりは真顔で見合う感じになった俺達は互いに吹き出した。こんな駆け引きでさえとてつもなく幸せだ。
「友さん。俺が遊んでた場所に、行ってみませんか?」
「い、行きたい!連れてって」
瞬間、恋人の顔になる可愛い人。
いつの間にかそっと繋がれた手を握り締め、ひと時のぬくもりを感じながら、ゆっくりとドアへと向かった。
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