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 何かを一緒にすることは俺だって常にある。 何かを一緒に共有することで楽しい思い出が増えていく。それは俺と友さんがずっと一緒にいる上で大切なことだ。  俺の田舎で思い出を作る……。  それが友さんの中でどれくらい大きなことなんだろう。 改めてそう思う。 ここに来たがっていた友さんがしたいことがあるならなんだってしたいし、俺の田舎を好きになってもらいたい。それは心のどこかで思っていたこと。 懐かしい場所を案内し知ってもらいたい、感じてもらいたいと思うばかりだった。  俺の田舎で友さんと一緒に何かをして、思い出を足していく。 なんてすごいことなんだろう。 そう実感すると大きく深呼吸をする友さんの腕を引っ張り引き寄せた。 ふらついた友さんを支えるように腰に手を回しぶつけるように唇を奪った。 触れる瞬間、目を見開いた友さんが視界に入ったが、そんなことは気にしない。  学生時代、走り倒したグラウンドで大好きな友さんと走り、大好きな友さんとキスをする。  俺の過去に友さんとの今がシンクロした気がした。  ずっと昔から友さんがここに居たかのような錯覚に胸が高鳴る。  唇を離し近距離で見つめ合った。 『友さん、好きです』 幼い告白のような科白に、友さんが柔らかく笑った。 『俺も、元希が好きだよ』 友さんの腕が俺の腰に回る。そして気恥ずかしさを隠すように、俺達は見つめ合い微笑んだ。      
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