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燃えたぎる内部を暴き、その最奥に精を吐き出した俺はその愛おしい身体を抱きしめ余韻に浸っていた。
熟年夫婦のような誘い方をした俺、それに笑い転げた友さんでも、コトが始まれば淫らに愛おしいありったけの思いを込めた一つに溶け合える行為に変わる。
それが男同士だとか上司と部下だとかそんなものは取払った互いを求め合うものになる。
横たわる俺に向かい合うように転がる友さんは満ち足りた笑顔を向けた。
「……何考えてる?」
そう尋ねれば乱れた髪を梳くように細い指先が触れる。
「一緒に住む選択をしたのは正解だったなぁって」
「……そうだね」
どこをどう感じてそう思ったのかはわからないが、俺もその事には同意だった。
毎日の日常に友さんがいる。だが家族以外と住んだことの無い俺は、多少の不安はあった。
それは、生活習慣の違いからお互い気を遣い暮らすのは疲れてしまうのではないかという不安。
だけどそんな不安は暮らし始めると途端に無くなっていった。
俺の生活にひっそりと寄り添うように暮らす友さんは次第に溶け込むように馴染み、なくてはならないものになったからだ。
無理な主張もこだわりも押し付けたりはしない。それでも気遣っている素振りはない。自然に溶け込み存在だけを主張してなくてはならないものになっていた。
「おかえりって言えるっていいよなぁ。器があってその場所は二人だけのものでさ、お互いが求める空間がそこにある。幸せが詰まってる器がある」
両親と縁の薄い友さんの求めていたもの。愛情たっぷりに祖父母に育てられたからといって寂しくないわけではないはずだ。
大切な人達と暮らす家。その器があってこそ離れてもまたそこに帰ることができる。
友さんがずっと求めていたものなのかもしれない。
「いつでも……いくら時間が経っても『ただいま』って、俺のところに帰ってきて……」
「俺の帰る場所はもう、友さんの所だけだから。友さんも俺の所だけだよ、帰ってくるのは」
何度も頷いた琥珀色の瞳はゆらゆらと揺れた。
腕の中に取り込むように抱きしめ、『ここがあんたの器の中の特等席だから』と俺は髪に顔を埋め呟いた。
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