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軽く流すようにグラウンドを走り、体も温かくなってきた頃、俺は友さんに尋ねた。 「本当に競うの?」  自慢ではないが高校時代には結構いい成績を残している。 諸々の大会にも出ていてそれなりの記録を出してきた。そんな陸上経験者と競うなんて、なんていうか無謀だと思う。 「え?ダメか?」 「いや、俺、陸上経験者だよ?」 「知ってる」  俺の戸惑いなんて何も感じていないのかにっこり笑うと、うっすらと見える白線を見つけ、今にもスタートしそうな勢いでフォームを作り出す。  また慌ててスタートラインに立つ。  隣に移動しまるで初心者のように友さんの真似をした。 「用意はいいか?」 白線のそばに指を付き琥珀色の瞳は俺のほうを見た。正面を向いたかと思えば勢いよく、 『よーい。バン!!』 と、間髪入れない速さでスタートを切る友さん。何のことはなく出遅れる俺。  予想とはかけ離れた速さで走る友さんにあっけにとられながら全力疾走で追いかけた。  いかにも走りなれたそのフォームを後ろから追いかけながら陸上経験者だったのかと驚く。しかし出し抜かれたままでは終われない性分の俺は加速をかける。  ほぼ同時、いやほんの数秒勝ったであろう俺は大きく円を描くようにスピードを落とし、膝に手を付いてハアハアと肩で息を整える友さんのそばへと駆け寄った。 「り、陸上経験者っ!」 上がった息のまま抗議をする俺に声をあげて笑う友さん。 「すごい!早いな、やっぱ!記録保持者は違う!」 「知っててっ!」 「そりゃ部下のことは大概は知ってるさ」 いち早く息を整えかけた友さんはポン!と俺の肩をたたいた。 「走ってみたかったんだ。元希と。お前の田舎で」  ポカンとその可愛い笑顔に見惚れて、慌てて生気を取り戻す。 「一緒に走りたかったの?」 「あぁ、うん。ここでね。何か一緒にしたかったんだけど、走るのが手っ取り早い気がしたんだ。俺も少しは走れるしね」
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