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雨は5分もしないで止んだ。小雨を忘れたように突然雨が止まって、見上げると雲一つない晴天だった。
「見事な空だ」
傘が言った。
「確かに」
雨が止んだので傘をたたもうと手が動く。けれど、途中でそれを止めて、また頭の上に持っていった。
「なにしてんだよ」
「さてね。日傘の代わりにならないかと思ってさ」
「なるもんか」
「それは残念だ」
気にせずに笑いながら歩き始める。すると。
「……あ、海の匂い」
「あんだけ降って、満足したんだろ」
「かな? なんか、このあたりが一回海の底に沈んだみたいだ」
濡れてないものがないほど、あたりはびしゃびしゃだ。
魚が跳ねていてもいまなら「そっか」と当たり前に受け入れられそうな気がする。
「さて」
いきなり傘が言った。
「ここでお別れだな」
僕たちの目の前にゴミ置き場があった。
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