雨上がりの、濡れたキミ

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 LINEの通知もオフにしてあった。気が散ってしまう。千夏の事を自分が嫌いになった訳ではないから、区切りが必要だった。  室内にさっと風が吹き抜けたかと思うと、雨になった。先ほどまでの青空は退場して、窓の中は降りしきる雨で一気に白くなった。すぐそばの隣のアパートさえ見え難い。  律は窓のそばに行って、風が通る位まで閉めた。その時、稲光が部屋を真っ白にして、雷鳴が続いた。古いアパートはその轟きで揺れているようだった。それは律の気持ちのぐらつきでもあった。汗をもう一度拭い、フローリングに腰を下ろした。温くなってしまったペットボトルの水を飲む。田舎では近くで湧水が出て、夏でもいつも冷たい水が飲めた。都心の水道水も十分美味しいけれど、やはり違うと最近は思う。律は普段、水はあまり買わないのだが、これは千夏が遊びに来た時に置いていった一本だった。
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