雨上がりの、濡れたキミ

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 ショートボブでさらさらと揺れる千夏の髪が、律は好きだった。客を迎える時の「いらっしゃいませー」というよく通る声も好きだった。帰り道に、妙に甘えてくる所も好きだった。サンダルを履いたりすると律より高くなる背の高さで、小さな頭をぶつけてくるのが好きだった。  降り続ける雨を見ながら、好きな所ばっかりだったな、と律は思った。千夏は大手の会社に採用されて、居酒屋のバイトからは惜しまれながら卒業し、生活のリズムも変わった。  親しくなると、千夏は意外に気が強いのが分かった。気が強いというよりは頑固というのか、自分を曲げなかった。だから律が実家に帰るという話も、素直には受け止めてくれないだろうと思っていた。
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