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実家に帰る気になったのは、父が倒れた事がきっかけだった。律の実家は小さな文具店を営んでいる。今時は客も少ないが、雑貨店のような体裁にして何とかやっている。父の代で終わらせても良さそうなものだったが、何となく自分が帰るきっかけのようにも思えた。考えてみると自分は何かに流されて生きているようにも思えた。この雨雲のように、風に流されて押し出されて行くだけの人生なのかなと、律はぼんやりと空を見ていた。この雨では依頼してある業者は濡れながらの作業になる。申し訳ない気分になった。
手持無沙汰になってもう一度段ボールの梱包を確認し、サインペンで中身を書いたりしているうちに、雷の音が止んでいるのに気づいた。雨音も小さくなっていて、振り向くと陽射しが窓に戻っていた。
律は窓際に行き、殆ど閉めていたサッシ窓を全開にした。
むっとした空気が入ってきて同時に、濡れた路面をかけて来る足音が聞こえた。
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