雨上がりの、濡れたキミ

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 下を見ると、真っ白なワンピースを着た千夏の姿があった。びしょ濡れのまま、千夏は律をふり仰いで、立ち止まった。髪から雨水が滴った。雨上がりの陽射しを浴びたその姿は、輝いているように律には見えた。  まるで地面に踏ん張るような恰好で、千夏は律を見上げている。そして、叫んだ。 「律!馬鹿!」  それが精いっぱいだというかのように、千夏は膝に手をついた。肩が上下している。律は何かに急き立てられるように、スニーカーをつっかけて外に出た。転びそうになりながら狭い階段を下りて、表の道に飛びだした時も、まだ千夏は肩で息をしていた。 「何やってんの」  律がそう言うと、勢いよく右手が飛んできて頬を張られた。 「馬鹿!LINE見てないの?」  律は首にかけていたタオルを、千夏に差し出した。 「風邪ひくから」
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