エピローグ

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休みのたびに東京に帰ってくる…なんてことは、言わない。 だって、一年目のルーキーがそんなことしてる余裕はないはずだから。 那奈も、新卒一年目なんだから、状況は同じ。 多分、ここからの数年は、俺たちにとって正念場だ。 でも、ちょっとワクワクしてる。 幼いころに夢見た、プロのサッカー選手という道に、俺は一歩を踏み出した。 これから、どこまで進んでいけるわからない。 でも、俺の人生の隣には、もう一本の道が並行して続いている。 隣の道の主は、俺の最愛の人。 高校で俺たちは出会い、仲間として三年間を過ごした。 その後、恋人同士として…時には重なり合い、時には距離を置き、でもずっと並行して歩き続けてきた。 ここから、ちょっと二本の道は離れるかもしれないけれど、近い将来またきっと、寄り添い合える時が来るだろう。 その時に、胸を張って那奈の隣に立つために、俺は俺のやるべきことをやらなきゃいけないと思う。 とにかく少しでも早く正キーパーのポジションを取ること。 実績を積んでいけば、数年後には移籍の可能性だって出てくる。 それが関東圏とは限らないけれど、でも自分の可能性を自ら狭めるようなことは絶対にしない。 将来的には、東京の空港の近くに家を構えて、俺がオフのたびに戻るような生活もありかもしれない。 絶対に手放さないと、決めたんだ。 サッカー選手は、装身具を身につけることは認められていない。 実際危ないしな。 相手も、自分も。 キーパーはグローブを必ず着用しているけど、中に指輪をしてたりしたら多分自分が怪我をして終わりだ。 だから、俺は何もつけられないんだけど、那奈には高価すぎないリングを贈った。那奈の勤め先は、華美でなければアクセサリー可だったから。 那奈はちょっと嫌がったんだ。 人の怪我を処置する仕事だから、指輪をして仕事はしたくないって。 でも俺が押し切って、ネックレス用のチェーンもそろえて贈った。 仕事中は胸から提げてくれてもいいから、プレイべートでは付けていてほしいと思って。 まだまだ、ほんもの(エンゲージリング)を贈る力はないけれど、いつか…とは思ってる。 俺たちの歩む道は、まだまだ続いていくんだから。 どこまでも隣を行こう。
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