プロローグ

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俺の母は大学の教員で、俺は三つ上の兄貴と一つ下の妹の三人きょうだいなんだけど、子供心にちょっと不思議でもあったんだ。祖父母と暮らしているわけでもなく、大人が一人で子供が三人。 そもそも、母親だけと暮らしていて三人きょうだいというのは、はっきり言ってかなりの少数派だった。大体が一人っ子か、いても二人。小学校に上がって周りの家庭が少しずつ見えるようになってきて、自分の家がちょっと…変わってるということは感じてたな。 兄は、俺が父親のことを話してもらったその時点で中一だったんだけど、ちょっと、いやかなりの変わり者で。 自分はそういうことに全く興味がなかったって言ってた。 兄のときの作文の課題は「名前の由来」だったはずなんだけど、そんな話を母親としたときに、家族のことを知りたいとまったく思わなかったというのは、なんというか…やっぱりちょっと変人というか、うん、変人。 その兄も、父親の顔はおぼろげにしか覚えていないと言ってたな。 兄にしたら、小3の終わりごろまで戸籍上は父親がいたはずなんだけど、それでも覚えてないってどういうことだよ。 そして、そのことを全く何とも思ってない兄。 さらに、自分が一人で育てている子供たちに、事情を説明した方がいいんじゃないかと思いつきもしなかったという母。 何となく、母と兄に共通する「何か」を感じていた俺は、そこで何か一つ悟ってしまったのかもしれない。 …ちょっと、変わってる? うちの家族…って。 俺は保育園でも小学校でも、『直哉くんはしっかりしてるわね』とか『木村君はきちんとしてるから安心だね』とかよく言ってもらえる子供だった。 だから、自分がある程度常識的…というか、世の中の大人にほめてもらえるというか…いわゆる優等生的なタイプであることは自覚していて。 でも母と兄は、そんな自分とは全く違ってた。
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