陽だまりのように

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 いつ何が起こってもおかしくない。一太の母からそう聞かされていた貴子は、心配で眠れない日々を過ごしていた。そして、体調が少しでも良いと聞いた日には、千羽鶴を持ってお見舞いに行っていた。 「一太君。また沢山折ったから、枕元にでも置いといて。早く元気になって、私と沢山遊ぼうね。」 「貴子ちゃん……。いつも、本当にありがとう。」  しかし、貴子の願い虚しく、一太の病状は悪化する一方だった。そして、いよいよ危ないとなった日。貴子は彼の母に、顔を見せてやってくれと頼まれ、彼の部屋へ急いだ。  その日は、じめじめと夕立が不気味に降っていた日だったことを、彼女は今でも鮮明に覚えている。
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