視線の先

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 まどかさんがこれだけ魅力的なんだから、周くんが夢中になるのもわかるけど……。  千愛希には輝いて見えるまどかの姿に、ほうっと儚げな吐息をついた。  千愛希にとってまどかは憧れであり、救世主でもあった。大学3年の時、突如現れた一まどか。当時の静岡県民にとってはスターだった。  たった一度市の広報で職場紹介されただけの人物。ただそれが『美人過ぎる介護士』とネットで大騒ぎとなり、地元のテレビ局で放送されるやいなや人気は急上昇したのだ。  当時、なにかにつけて~過ぎるというフレーズが流行ったが、テレビ局が発信した『美人過ぎる』は伊達ではなかった。  普段仕事で動き回っているからか、程よい筋肉と168cmのすらりとしたスタイル。綺麗な二重の線を描く形の良い目。  3Kと呼ばれ、誰もが嫌がるような介護の仕事を「楽しい」と言って笑顔を振り撒く。その姿が実際両親の介護を担っている主婦層や今後介護を受けていくであろう高齢者から絶大の人気を誇った。  加えてその美貌から、若い女性達がこぞって髪型やメイクを真似たりとすっかり県民スターとなったのだ。  千愛希も例外ではなかった。高校時代は律にこてんぱんにやられ、自信を喪失した。大学に入学してようやく自信を取り戻し始めたところに出会ったまどか。  普段テレビなどは見ないのだが、パソコンを常に持ち歩いていた千愛希は県民の誰よりも早くまどかの情報をキャッチしていた。
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