様々な恋愛事情

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様々な恋愛事情

12月19日 土曜日  律はテーブルの上で頬杖をついて、めんどくさそうに顔を歪めていた。 「なぁ、律! 聞いてんのかよ」 「聞いてるよ。で、結局何が言いたいの?」 「だからさ、どうしたらより戻せるかなって……」 「無理でしょ」 「むっ! ……はぁ……」  男は律の向かい側で腹の底から大きく息を吐いた。  白と黒が基調の生活感のない一室。綺麗に片付けられたこの空間が、律はけっこう好みだった。この男さえいなければ。そうは思うが、このマンションの一室はこの男の家なのだから仕方がない。  先々週会ったばかりだというのに、休みの度にこう呼びつけられてはたまったもんじゃないと律は顔をしかめる。  先週は妹同然の幼なじみが誕生日とあって律の家に来ていたり、その次の日は妹の奏がまどかとケーキ作りをすると張り切っていた。  そのケーキの発案者は律の親友である桐生(きりゅう)璃空(りく)であり、そのケーキに使用されるチョコレートは共通の女友達である仁藤(にとう)叶衣(かなえ)が営業の売上が伸び悩んでいると嘆いている商品である。  人気沸騰中の妹を使ってその商品を売り込もうとしているところだった。  普段なら、友人のまして女友達の仕事が上手くいかないくらいで手を貸してやるような律ではないが、今回はわけが違う。  というのもこの目の前の男、大野(おおの)(れん)に全ての原因がある。  今月の頭に蓮の浮気が発覚し、彼女の叶衣に振られたのだ。蓮の紹介で2人が付き合う前から律と璃空とも友人となった叶衣。男っぽくてがさつで、嫌味のない叶衣は女嫌いの律や璃空も気兼ねなく会話ができた。
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