様々な恋愛事情

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「記念日にはプロポーズしようと思ってんだよ!」  爽やかな笑顔で先月そう言っていたはず。そして、その記念日は来月だったはず。なのになぜ今になって浮気が発覚したりする。しかもよりによってその相手が璃空の妹ときたものだから、律は呆れてものも言えない。  親友の蓮のせいで叶衣は当然大泣きだし、蓮と叶衣が付き合う前から叶衣に恋心を抱いていた璃空が猛アプローチを始めたものだから余計にややこしい展開になっている。  仕事も恋も上手くいかないと嘆いていながら毅然と振る舞う叶衣のために、せめて仕事くらいは力になってやってもいいかと奏に宣伝を頼んだのだ。  それだって先週のことで、休みが潰れたというのに今週までお前の相手はしていられないと律の機嫌も悪くなる。  とはいえ、しつこいくらいに電話を鳴らす蓮が家まで押し掛けてきそうだったため、渋々蓮のマンションまで足を運んだのだ。  いつものように律の好きなブラックコーヒーを出されたはいいが、いつまでもメソメソと後悔の言葉を並べる蓮。 「いい加減にしなよ。そもそも浮気しておいて許してもらおうなんて考えてるから悪いんじゃないの? もう諦めれば解決じゃん」 「お前は本当に冷たいな!」 「冷たいってなに? 俺には浮気する方が理解できない」  恋愛感情だってよくわからなかったのに、浮気なんて俺にわかるはずがない。千愛希と付き合っていながら他の女に手を出すってことでしょ? ……ないない。千愛希と付き合うことだって普通の恋愛とは違うのに、そこにきて他の女なんて気持ち悪くて無理。蓮も無理。本当に気持ち悪い。  そんなふうに思う律。コーヒーカップを口につけ、もう帰りたいというように足を崩した。
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