様々な恋愛事情

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「ないよ。あるわけないでしょ。璃空じゃあるまいし」  蓮の彼女になんて誰が手を出すもんか。こんなふうに相談されるだけでも面倒なのに、ぎゃんぎゃん責め立てられたらたまったもんじゃない。 「そうだよ! 璃空だよ! アイツ……」 「もう放っておきなよ」 「放っておけるかよ! 璃空が叶衣を口説いてるんだぞ!? 俺は璃空と親友だったのに!」  わかってる。俺達は3人で大学から今までそれなりに仲良くやってきたんだから。俺にとっても蓮も璃空も親友。でも、だからこそ璃空が蓮を許せないってなんでわかんないかな……。  律は目頭を押さえた。 「璃空の気持ちも考えてやんなよ。叶衣のことが好きだったのに、お前のために諦めたんじゃん。それが蓮が泣かせて辛い思いしてるんだよ? 悪いけど、もし俺が璃空でもそうするよ」 「律……。璃空が叶衣のこと好きだって知ってたら浮気なんかしなかった」 「だろうね。でもした時点で蓮は叶衣のこと幸せにはできなかったよ。もう璃空に任せておきなよ」 「なんでだよ! お前はいつも璃空の肩ばかり持つよな! お前達、似てるもんな……」  蓮の言葉に苛立ちが募る律。律は璃空と似てると言われることが好きではない。似ているのはその美しい容姿と冷淡に見せる眼、淡々と話す口調など見た目だけではなかった。  同じく女嫌いで他人に対して関心が薄く、何かに夢中になることがない。  冷たい、自分本位、感情が乏しい。そんなふうに言われることもしばしば。けれど、律は知っている。あんなふうにふわふわと何を考えているかわからない璃空も、蓮のために自分の恋愛を諦めたり、泣いている叶衣を放っておけなかったり、人間らしい優しさを兼ね備えていることを。  親友でありながらそんな璃空の長所から目を背けて、自分の失態を棚に上げて璃空を責めるんだから救いようがないと律が憤りを感じるのも当然だった。
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