様々な恋愛事情

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「じゃあ、少し寝かせて下さい。1時間経ったら起こしてくれます?」 「ああ。その間、俺はできるところまで進めておく」 「はい。……あ、じゃあ早速このゲームエンジンを使ってみて下さい」 「使ってみろったって……仕様書はこれから作るんだろ?」 「曽根さんの技術ならすぐに使いこなせますよ。使用しているプログラミングも見ればわかると思います」 「そう……か」  睦月はぽかんと口を開けたまま、頷いた。千愛希はうんっと伸びをして立ち上がると、ヒールを鳴らして応接室へ向かった。  睦月は、千愛希が使用していたパソコン前に座り、作業を始めた。千愛希のゲームエンジンを使用する前の仕様書は睦月が書いたものだ。  ゲームの仕組みもシナリオも全て頭に入っている。問題は、このゲームエンジンを使いこなせるかどうかだけだ、とキーボードに置いた指を動かした。  睦月は、千愛希が言ったようにすぐにシステムを理解した。元々は千愛希が尊敬するほどの技術の持ち主なのだ。アプリ制作に至っては睦月の方が千愛希よりも断然長けている。  明日には社員全員が出社してくる。恐らく鍋田も。鍋田にはまだ連絡をしていなかった。こちらの情報が漏れると困るため、とりあえず明日までは使用するパソコンを千愛希が現在使用しているもの1台とし、ハッキングされないようシステムを強化させた。  それから、千愛希の言っていた盗聴器も2つ見つけ、それらも破棄した。  完全に情報が筒抜けだったことに頭を抱える睦月だったが、千愛希は冷静に「とにかく一刻も早く完成させて配信してしまいましょう。向こうだって、中途半端なままじゃ配信できないはずです」と言った。
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