視線の先

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 広報の内容もパソコンから全て読むことができた。自分の仕事に誇りを持ち、誰になにを言われようとやりたいことをやっている自分が好きだと語られた言葉。  千愛希はその言葉に強い感銘を受けた。  介護の仕事は、一流大学を卒業していなければ就職が困難なわけでもないし、介護福祉士という資格は働きながらでも取得できる。  就活するにあたって『簡単に入職できる』職業であった。しかし、入職は容易でも仕事内容から継続できる者は少なく、汚い、臭い、きついの3Kに耐えられぬ者が多い。そんなことは就活している大学生なら皆知っているし、誰もなりたがる人などいない。  それでもこんな美人でスタイルの良い彼女が、「介護は素晴らしい仕事だ」なんて言ったものだから、一時的に介護士になりたがる人間が爆発的に増えた。  しかし、耐えきれずに辞めていった人物の方が圧倒的に多いのは言うまでもない。現在でもまだ介護の職に就いている人物がどれだけ残っているだろうか。それは誰にもわからないところだが、現在でも人手不足の介護施設がゴロゴロあることから、そう多くないことは容易に想像できた。  千愛希は予てより夢だったシステムエンジニアという職業を諦めてはいなかった。まどかの話を聞いたら、女性だってバリバリ働くことが普通なんだと思えた。  システムエンジニアは8~9割が男性という男女比の激しい職業でもある。実力社会のため就職に不利ということはないが、男性ばかりの中にポツンと女性が入り込んで働くのは容易ではない。
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