様々な恋愛事情

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 千愛希はゲームルール、シナリオはそのままにまだ手をつけていなかった章を変更する提案をした。ゲームの難易度を上げ、イベントやミニゲームも追加した。  千愛希は先日律と行ったパズルゲームからヒントを得て、準備は着々と進んだ。それらも踏まえて睦月は新たに制作していく。土台は千愛希が設定してあったために、AIが直ぐにシステムを飲み込み、自動に作り上げていく。 「すげぇな……」  睦月は画面を食い入るように見つめた。認識したプログラミングをAIが自動で打ち込んでいるのだ。  こりゃ、もう人間がいらなくなる時代もくるかもな……なんて思いながらもこんな機械を作り出せるのも人間の成す技だ、と自分を奮い立たせる睦月。  2時間近くが経った頃、睦月ははっと顔を上げた。千愛希に1時間経ったら起こせと言われていたことを思い出したのだ。  一旦手を止め、応接室へ向かう。ドアを開け、ソファーに近付くとすっかり寝入っている千愛希の姿に息を飲んだ。  長く細い足を投げ出して、無防備にも仰向けで寝ている。睦月と2人だけ、という環境が千愛希をそうさせたのか、今になってどっと疲れが出たのかは睦月の知るところではない。  そっと近付くと、第1ボタンの開いたブラウスから白い肌が覗いている。本日は薄ピンクの唇が光を反射して艶やかだった。  2年前はこんな姿も自然と近くにあった。睦月のマンションでも、千愛希の寝室でも。簡単に触れることができた。別れを告げたのは自分だというのに、こんな姿を見せられては胸が熱くならないはずがなかった。
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