様々な恋愛事情

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 その足が今、目の前にある。ペディキュアは濃藍に変わっていた。忙しい中でも休日を使って足先まで美しく整える美意識。見えないところにまで気を遣う、そんなところも睦月は好きだった。  ただ、今は好きという気持ちよりも興奮が高まる。ストッキングに包まれ、何時間もパソコンに向かっていた足。きっと俺好みに仕上がっているんだろうな……そう思うと、下半身はパンパンに膨れ上がっていた。  じっとりと食い入るようにそこに視線を向けた。千愛希の顔から距離を取り、真っ直ぐ視線の先に向かった。鼻先を近付けて、息を吸い込んだ。  途端に全身に鳥肌が立った。千愛希の足はいつでも無臭だった。想像している蒸れた鼻を突くような強い匂いはしない。けれど、ストッキングの繊維とパンプスの革の匂いが移った足は、長時間の仕事を連想させるには十分だった。  軽く口を開き、唇で左足趾を挟み込んだ。舌先が触れてしまわぬよう気をつけながら、今度は口で呼吸をした。  ふー……ふー……と目を血走らせながら、更に固くなった自分の下半身に触れた。欲を放ってしまわぬよう、ぐっと上から押さえ込む。  唇を離し、まるで千愛希の足趾を舐め上げるかのように舌舐めずりをした。それだけで、手の中のモノがビクビクと震えた。  あぁ、ヤバい……射精(でちゃ)う射精う……。我慢しろ、俺。  じっと我慢をするように目を閉じ、その興奮が爆発しないよう理性を探す。目の前のソファーとテーブル。客人を招いた際にはここで商談することもある。  睦月は政治家の息子として生まれ、幼い頃より勉強や道徳を強いられてきた。他の子供に比べそれは苦痛にも思えるほどの厳しい教育だった。  その反動か、してはいけない場所でしてはいけない行為、そんな背徳感が更に睦月を興奮させた。
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