様々な恋愛事情

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 熱い吐息を漏らす中、ようやく千愛希が「ん……」と反応を示した。睦月はびくっと体を震わせる。  自分がしたことがバレるんじゃないか。濡れた足先の感覚に気付くんじゃないか。勃起した下半身に軽蔑するんじゃないか。  そんな焦りが睦月を支配する。気持ち悪い、最悪、大嫌い。そんな言葉が脳裏に渦巻くが、千愛希の冷たい視線を思い出すと興奮はとても治まらなかった。 「……睦月?」  久しぶりに名前を呼ばれた。ここ数日間、ずっと曽根さんと苗字で呼ばれ、敬語だった。名前を呼んでもらえたことが、求めていた欲を手助けするかのようだった。  ぼんやりと天井を見つめた千愛希。懐かしい香りがした気がしたのだ。じんわり唇に違和感があるが、寝ていたためかとうとうとしながら考える。  ここはどこだっけ……と数秒思考を巡らせてからはっと、大きく目を開けた。 「あ、起きたか? 何度か起こしたんだけどな」  睦月は平然を装ってしゃがんだまま微笑んだ。下半身はまだ熱をもったままだ。触れたことにもいつ気が付くかとそわそわする。  けれど千愛希は全く気付く素振りは見せず「今何時ですか?」と尋ねた。 「18時だよ。悪い、俺も集中してて余分に1時間寝かせた」 「そうでしたか……すみません」  とろんとした瞳でゆっくり瞬きをする千愛希。こんな無防備な姿を見るのも実に久しぶりだと睦月は歓喜した。  ……可愛いな……。できたらもう少し寝かしてやりたい。あぁ、でも寝てたら寝てたで俺が我慢できないかもしれないな……。  未だにスラックスを押し上げている下半身に意識が集中した。  千愛希はうんっと伸びをし、足を降ろすとパンプスに爪先を入れた。先ほどまで睦月が咥えていた爪先だ。睦月はその様子を見て、また大きく喉を鳴らした。
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