様々な恋愛事情

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「天才などと言うのは簡単だが、俺はそんな一言で片付けて欲しくないよ。実績を得ている社員は皆それなりに努力してる」 「俺は努力してないって言いたいんですか?」 「そうは言ってないだろ。ただ、努力が足りないとは思うよ。千愛希も他の出世してる社員も1日の内何時間パソコンに向かってると思う? 何時間、仕事関連の勉強をしてると思う。鍋田が動画サイトで動画を開いている間、ずっと仕事のことだけ考えてる連中がいる」  睦月は、鍋田以外にも育てた優秀な部下達の存在を思い出していた。現在は、他の副社長の元で役職についている者も多い。睦月にとっては自慢の部下達ばかりだった。  休みは休む為にあるんだと何回言ってもひたすら家で勉強していたり、早く1人前になりたからと仕事の資料を持って帰っていいかと聞いてきたり。  睦月や千愛希ばかりではない。この会社にはそうった努力を惜しまない社員が大勢いるのだ。その中で少しでも手を抜けば、どんどん追い越されていくのは当然だった。 「俺だって……それなりに家で勉強しましたよ。土浦さんはいいですよ。プライベートでも曽根さんから技術を教わってたんですから」 「お前な……そこに嫉妬しても仕方ないだろ」 「嫉妬じゃありませんよ! 不公平だって言ってるんです! 皆独学で踏ん張って、社内でなんとか追い付こうと頑張ってるんですよ! でも土浦さんは、職場外でもいつでも曽根さんから聞きたいこと聞いて、成長させてもらえるんですからね。そりゃ、入社時期が同じでも差がつきますよ」  不貞腐れるようにそっぽ向いた鍋田に、子供かよ、と睦月は顔をしかめた。
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